コンサルティングファームやSIerに5年もいれば、社内の単価表は頭に入っています。ただ、その表に載っているのは会社の値段であって、自分の値段ではありません。案件サイトを開けば月150万円のITコンサル案件が目に入りますが、それが標準なのか上澄みなのかは、どこにも書いてありません。

そこで、offeeerに掲載されたITコンサルのフリーランス案件157件(2026年9月時点)について、単価・働き方・稼働率・併記された職種タグを1件残らず数えました。中央値は135万円で、100万円を下回る案件は5件しかありません。会社の単価表とは、だいぶ違う景色でした。

ITコンサルのフリーランス案件の単価はいくらか

中央値は月135万円です。単価が記載された136件のうち、100万円以上が131件で96.3%、150万円以上は53件で39.0%、200万円以上は11件で8.1%でした。四分位で見ると下位25%の境目が120万円、上位25%の境目が160万円で、大半の案件が120万円から160万円の幅に収まっています。

単価は月額・税抜で、稼働率100%を前提にした金額です。稼働率が50〜79%の案件が14件ありますが、その単価がフル稼働換算なのか実際の受取額なのかは案件票から判別できません。この記事の数字は単価の水準として読み、実際の月の受取額は稼働率を掛けて考えてください。

価格帯の分布は、山というより階段です。100万円のところに床があり、150万円に踊り場があり、200万円から上は別の階になっています。

価格帯(月額・税抜)件数割合
50〜79万円10.7%
80〜99万円42.9%
100〜149万円7857.4%
150〜199万円4230.9%
200万円以上118.1%
ITコンサル案件の単価分布(単価記載136件の価格帯別の件数と割合)

他の職種と並べると、ITコンサルの位置がはっきりします。同じ時点のoffeeer掲載案件で、職種タグ別の中央値と100万円以上の割合を比べたのが次の表です。

職種タグ単価記載件数中央値100万円以上150万円以上
コンサル386150万円97.4%51.0%
ITコンサル136135万円96.3%39.0%
PM204130万円91.2%31.4%
PMO341125万円87.1%26.7%
掲載案件全体1,594125万円79.6%29.8%

ITコンサルの中央値はPMOより10万円、PMより5万円高く、戦略や業務領域を含むコンサル全体より15万円低い位置にあります。注目したいのは中央値より100万円以上の割合です。PMOの87.1%に対してITコンサルは96.3%で、床の高さがほぼコンサル全体と同じです。ITコンサルというタグが付いた時点で、100万円を下回る案件はほとんど出てこない、というのが実測の答えになります。PMO側の分布はPMOフリーランスの単価相場で、3職種の差はPMO・PM・ITコンサルの単価差で詳しく扱っています。

単価帯で任される仕事はどう変わるか

100万円台前半の案件はPMOやPMの役割を兼ねるものが多く、150万円を超えると業務領域やパッケージの専門性が求められ、200万円以上は専門分野が一つに絞られた案件になります。ITコンサルタグの案件に、どの職種タグが併記されているかを帯ごとに数えると、この傾向が数字で出てきます。

価格帯件数併記が多いタグ
100〜149万円78PMO24件・PM19件・コンサル15件・PL5件
150〜199万円42PMO13件・コンサル11件・PM7件・SAP5件・プリセールス3件
200万円以上11PMO・SAP・コンサル・PMが各2件、アーキテクト・セキュリティ・AI・アドバイザリーが各1件
単価帯ごとに併記される職種タグ(100〜149万円・150〜199万円・200万円以上)

100〜149万円帯では、78件のうち24件にPMO、19件にPMのタグが付いています。ITコンサルという看板でも、現場で求められるのは進行管理や課題の整理といったプロジェクト推進の実務で、コンサルティングファームで言えばマネージャー手前の動き方に近い案件が中心と言えそうです。

150〜199万円帯になると、SAPやプリセールスのタグが顔を出します。個別の業務領域やパッケージ製品に踏み込んだ知見、あるいは提案側に立った経験が単価の根拠になっている帯です。PMOの併記は依然として13件ありますが、その中身は進行管理そのものではなく、業務要件を握った上での推進役という位置づけに寄ります。

200万円以上の11件は、併記タグが分散しています。SAP、アーキテクト、セキュリティ、AI、アドバイザリーと、一つひとつが異なる専門分野です。11件中10件が稼働率100%で、働き方はリモート併用が5件、常駐が3件でした。高単価の案件は稼働を減らして受けるものではなく、専門領域を丸ごと預かる案件として出ていることが分かります。

IPAのITスキル標準では、コンサルタントという職種を「知的資産、コンサルティングメソドロジを活用し、顧客の経営戦略やビジネス戦略及びIT戦略策定へのカウンセリング、提言、助言の実施を通じて、顧客のビジネス戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献し、IT投資の経営判断を支援する」役割と定義し、提言がもたらす価値や効果、実現可能性に責任を持つとしています。offeeerの単価帯の階段は、この定義に近づくほど上に行く構造になっていると読めます。

ITコンサル案件はリモートで働けるか

157件のうち130件、82.8%がリモート可の案件です。内訳はリモート併用が79件、基本リモートが41件、フルリモートが10件で、常駐は24件にとどまります。掲載案件全体のリモート可も82.8%なので、ITコンサルだから出社が多い、ということはありません。

ただし、単価との関係は素直ではありません。働き方別の単価中央値を並べると、常駐が150万円で最も高く、リモート併用と基本リモートが130万円、フルリモートは110万円でした。

働き方件数割合単価中央値
リモート併用7950.3%130万円
基本リモート4126.1%130万円
常駐2415.3%150万円
フルリモート106.4%110万円
相談可31.9%120万円
働き方別の件数と単価中央値(ITコンサル案件157件)

常駐案件の単価が高いのは、経営層や事業部門との対面での合意形成が業務の中心にある案件ほど、常駐の指定が付きやすいためだと考えられます。逆にフルリモートの10件は中央値が110万円で、件数も限られます。フルリモートを最優先にすると、ITコンサル案件では選べる母数が10件まで絞られ、単価の上限も下がります。リモート比率の全体像はフルリモート案件は7.9%にまとめてあります。

週に何日出社するかは、単価と引き換えに決める条件だと捉えるのが実態に合っています。出社そのものに値段が付いているのではなく、出社を要する仕事の中身に値段が付いています。

2025年から2026年で単価はどう動いたか

中央値は2025年の135万円から2026年(1〜9月掲載分)の130万円へ5万円下がり、その一方で150万円以上の割合は35.3%から41.0%へ上がりました。分布の中心が下がったのではなく、幅が広がったと見るのが正確です。

掲載年単価記載件数中央値100万円未満150万円以上
2025年51135万円2.0%35.3%
2026年(1〜9月)83130万円4.8%41.0%
掲載年別の単価分布(2025年と2026年1〜9月の比較)

2026年は単価記載の件数が前年通年をすでに上回っており、100万円未満の案件がわずかに増えた分と、150万円以上の案件が増えた分が同時に起きています。案件の数が増えると、分布は両端に伸びます。中央値の5万円差だけを見て単価が下がったと読むのは早計かもしれません。むしろ150万円以上の帯が4割に達したことのほうが、これから参画する人には意味があります。

2024年のITコンサル案件は単価記載が2件しかないため、年別の比較には含めていません。掲載案件全体では2024年から2026年にかけて100万円未満の割合が31.1%から14.7%へ半減しており、床が上がる流れは職種を問わず続いています。

ITコンサルのフリーランス案件で求められる経験は何か

157件の併記タグで最も多いのはPMOの44件(28.0%)、次いでPMとコンサルがそれぞれ34件(21.7%)です。つまりITコンサル案件の3割前後は、プロジェクトを推進した経験を前提にしています。その上で、SAPが9件、AIとPLが8件ずつ、アーキテクト・プリセールス・インフラが5件ずつと、専門タグが単価を押し上げる材料になっています。

面談の回数も実測しました。157件のうち2回が104件で66.2%を占め、1〜2回が22件、1回が15件、3回が4件です。3件に2件は2回の面談を経て決まります。1回目で経歴と推進経験の確認、2回目で現場責任者との具体的な話、という流れが標準だと考えて準備するのが現実的です。

ITスキル標準は職種を11に分け、そのうちコンサルタントの専門分野を「インダストリ」と「ビジネスファンクション」の2つに区分しています。前者は産業・金融・公共といった業界固有の知識、後者は会計・人事・ITガバナンスのように業界をまたいで共通する業務の知識です。offeeerの帯別の併記タグを見ると、100万円台前半はプロジェクト推進の経験、150万円以上はこの2つの専門分野のどちらかで語れる実績、という切り分けになっています。

SIerからITコンサルのフリーランスへ移るなら何が変わるか

一番変わるのは、単価が会社の等級ではなく案件ごとの役割で決まることです。会社の単価表では等級が値段を決めていましたが、案件市場では推進役なのか、業務要件を握るのか、専門領域を預かるのかで、同じ経歴の人が120万円にも160万円にもなります。ITスキル標準がコンサルタントの活動をソリューション策定のための助言、ITアーキテクトの活動をソリューションの枠組み策定と分けて定義しているように、案件側もその境目で値段を変えています。両者の仕事の違いはITコンサルタントとSIerの違いで整理しています。

会社員のまま参画できるITコンサル案件はあるか

稼働率50%未満のITコンサル案件は0件でした。土日だけ、平日夜だけで受けられる案件は、少なくともoffeeerの掲載分には存在しません。稼働率が記載された156件のうち、50〜79%の案件は14件で9.0%、単価中央値は150万円です。80〜99%が1件あり、残りの141件(90.4%)は稼働率100%の案件でした。

稼働率件数割合単価中央値
100%14190.4%130万円
80〜99%10.6%-
50〜79%149.0%150万円
50%未満00%-

会社員のまま参画する道があるとすれば、日数にして週3日前後に当たるこの14件です。単価中央値がフル稼働案件より高いのは、稼働を絞った案件ほど特定の論点だけを預かる性格が強く、時間ではなく判断に値段が付いているためだと考えられます。裏返せば、稼働が少ないから責任も軽い、という案件ではありません。稼働を絞った形でも成果に責任を持てる設計になっているか、2回の面談で問われるのはそこです。

所属先を持ちながら業務委託で参画するときに最初に引っかかるのは、労働時間の扱いです。労働基準法の労働時間の通算は雇用契約の労働者が対象で、業務委託の稼働は通算の対象になりません。この前提と、就業規則の確認の順番は会社員のまま業務委託|労働時間は通算されない3つの前提にまとめてあります。

参画前に契約で確認しておくことは何か

2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、発注側には取引条件を書面か電磁的方法で明示する義務が課されました。口頭の説明だけでは義務を果たしたことになりません。給付の内容、報酬の額、支払期日は、参画前にメールなどの記録が残る形で受け取っておくものです。

報酬の支払期日は、成果物や役務を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で定めることになっています。エージェント経由の案件は、発注側がさらに上流から受託した業務の再委託に当たることがあり、その場合は再委託である旨、元委託者の名称、元委託の支払期日の3点を明示したうえで、元委託の支払期日から30日以内に設定できる例外があります。案件票の支払サイトがどちらの前提で書かれているかは、契約前に確認しておくと後の行き違いがなくなります。

期間によって適用される義務も変わります。報酬の減額などの禁止行為は1か月以上の業務委託が対象で、中途解除の30日前予告は6か月以上の業務委託が対象です。数か月単位の契約を更新して続ける場合、更新の積み重ねで6か月を超えた時点から、突然の打ち切りに対する予告のルールが働きます。契約書そのものの読み方はフリーランスが契約で絶対に確認すべき5つのポイントに、更新時の単価の上げ方はPMOの単価交渉に分けて書いています。

まとめ

ITコンサルのフリーランス案件は、単価中央値135万円、96.3%が月100万円以上、150万円以上が39.0%という分布でした。100万円台前半はプロジェクト推進の経験、150万円以上は業界か業務の専門性、200万円以上は専門分野を丸ごと預かる案件という階段になっています。リモート可は82.8%ですが、単価は常駐が最も高く、稼働率50%未満の案件はありません。

会社の単価表に載っている値段と、案件市場で付く値段は別のものです。自分の経歴が120万円の帯にいるのか160万円の帯にいるのかは、案件票と並べてみないと分かりません。この分布はoffeeerの案件一覧をそのまま数えたものなので、登録すれば同じ段の案件票を自分の目で確かめられます。157件の分布の、どの段に自分を置きますか。

出典・参考文献