大手の構想策定の募集を開き、必須欄の1行目のコンサルファーム出身を見て、そのまま閉じてしまう人がいます。たとえば、SIerで基幹刷新のサブPMを務め、いまは大手SIer経由のPMO支援に月115万円で入っている独立3年目の37歳(架空の例です)。次は構想策定かPMの役で入りたいのに、届くのはPMO支援ばかりでした。

必須欄は、企業が面談の前に見せる質問票のようなものです。offeeerに掲載実績のある1,816件のうち大手の上流案件139件の必須欄を2026年10月11日時点で全件読み、どの行で止まり、どの行なら経歴書の1行で答えられるかを数えました。

上流案件の必須欄にあるコンサルの経歴は、本当に必須?

大手の上流案件139件のうち、コンサルの経歴(出身・経験)を代わりの経歴なしに必須にしていたのは44件、31.7%でした。残りの95件、68.3%は、ファームで働いた経験がなくても出身の行では外れません。IPAのDX動向2026(2026年7月公開)では、DXに取り組む日本企業で、推進する人材の量をやや不足か大幅に不足と答えた割合が2025年度で85.5%でした。企業が構想や推進を担う人を社外にも探す背景と言えそうです。

案件名の語で分けると、139件は構想・企画系96件とPM・統括系43件です。構想・企画系の必須欄は、コンサルの経歴や経験を代わりなしで求めるもの40件、代わりの経歴でもよいもの10件、コンサルに触れないもの46件に分かれます。PM・統括系でコンサルの経歴が必須なのは4件でした。この先は、構想・企画系の40件を型1、残りの56件を型2、PM・統括系を型3と呼びます。

大手の上流案件の内訳(構想・企画系は必須欄のコンサルの書き方で、PM・統括系はコンサルの経歴が必須かで分けた件数)

条件の面でも、大手のPMO支援とは少し違います。

区分件数単価の中央値150万円以上リモート可常駐面談2回以上
offeeerに掲載実績のある案件全体(累計)1,816件121万円17.1%80.5%15.0%76.5%
大手のPMO支援(上流の語なし)72件112万円16.2%75.0%20.8%89.8%
大手の上流案件139件130万円27.7%80.6%9.4%83.3%
うち大手SIer・ベンダー・コンサル向け55件130万円30.9%92.7%2件91.7%
うち大手事業会社ほか84件130万円25.3%72.6%11件76.7%

単価は案件ページの月額(幅は上限・稼働100%時)。常駐の下2行は件数です。

大手の上流案件の単価の中央値は130万円で、PMO支援の112万円より18万円高く、常駐の割合は半分以下です。139件のうち2026年10月11日時点の募集中は26件です。職種ごとの単価の差はPMO・PM・ITコンサルの単価差を比べた記事に譲ります。

必須欄の行は、どう読めばいい?

必須欄の行は、2種類に分けて読むと見通しがよくなるはずです。出身・肩書き・年数・資格の行は、同等可や準ずるの注記がなければ、経歴書をどう書き直しても埋まりません。仕事の中身の行は、自分の経歴書から対応する1行を当てられるかで決まります。必須欄のある138件で数えると、行数の中央値は4行で、3行以下が48件、4〜6行が67件、7行以上は23件でした。

1種類目の行は、思ったより少ないかもしれません。139件のうちコンサルの経歴を必須にする行があるのは44件、PMの経験を名指しする行があるのは30件で、構想・企画系の5件を含みます。経験年数の指定は138件中11件、資格の指定は2件です。その2件もPMPが軸で、準ずる資格や同等のスキルでも可と添えてあり、資格の行で止まる人は少ないでしょう。

必須欄の行数の分布と、年数・資格を指定する案件の件数(必須欄のある案件が母数)

2種類目の行は多くの案件に並び、138件の必須欄ではコミュニケーション・調整52件、資料作成48件、プロジェクトの管理・推進48件が上位でした。

PMOの経歴だと、上流案件の必須欄で何が壁になる?

壁になる行は、コンサルファームの出身とPMの肩書きの2つです。この2つの指定だけで見ると、PMOが中心の経歴でも68件、139件の48.9%と半数近くは外れません。内訳は構想・企画系53件とPM・統括系15件で、冒頭の37歳もここに入ります。68件のうち年数の指定があるのは2件、資格の指定は0件なので、年数や資格では止まらないでしょう。PMの肩書きで率いた人(ファーム経験なし)なら95件、68.3%で約7割、コンサルファーム出身でPMの肩書きがない人なら109件、78.4%に広がります。

PM・統括系の必須欄42件では、PMを名指しするのが25件、PMかPMOのどちらでもよいのが5件、PMOの経験を求めるのが3件で、残りはどちらも名指ししない案件です。PMOの経歴でもよいと読める8件のうち1件はコンサルの経歴も必須なので、ファーム経験のない人に当てはまるのは7件です。逆に、構想・企画系にもPMの経験を名指しする必須欄が5件あり、PMO中心の経歴はそこで外れます。役割の違いはPMとPMOの違いで読めます。厚生労働省のjob tagも、プロジェクトマネージャ(IT)に就くのに特に学歴や資格は必要とされないとし、仕事を「プロジェクト実行計画の作成、予算、要員、進捗の管理などを行う」との説明です。

経歴別の外れない件数を構想・企画系とPM・統括系に分けた内訳

上流案件の必須欄には、ほかに何が書いてある?

仕事の中身の行に並ぶ言葉を型で比べると、型2は業界の知見と要件定義、型3は管理・推進、型1は資料作成の行で差が出ます。母数が小さいので、表は件数で見てください。

必須欄に出てくる言葉型1(40件)型2(56件)型3(必須欄あり42件)
資料作成21件17件10件
コミュニケーション・調整11件21件20件
構想・企画の仕事17件21件3件
要件定義3件16件11件
業界の知見7件18件4件
プロジェクトの管理・推進6件6件36件

型2の56件は職位の指定が1件、年数の指定も1件で、年数や職位で閉じる行はほぼないと言えそうです。IPAのDX推進スキル標準がビジネスアーキテクトの定義に「関係者をコーディネートしプロセス全体を牽引して成果を創出する役割」と書くのも、この型の行と重なるように見えます。要件定義の行が多いことは、IPA-SECの原理原則17ヶ条の第9条「要件定義は発注者の責任である」と向きが合います(出典:IPA-SEC「超上流から攻めるIT 化の原理原則17ヶ条(第9 条)」)。

型2向け(架空の例)経歴書の1行
書き換え前基幹システム刷新のPMO
書き換え後生命保険会社の契約管理システム刷新にPMOとして参画。業務部門5部署と要件定義書をまとめ、移行方式の比較資料を作った

型3の必須欄42件は管理・推進に集中し、クラウド・インフラ・セキュリティ16件、大規模案件の経験10件も目立ちます。IPAのプロジェクトマネージャ試験は対象者像を、責任をもってPMの業務を担う者と定めています。何人を何か月、どの範囲まで担ったかが問われる行なのでしょう。

型3向け(架空の例)経歴書の1行
書き換え前SIerで基幹システム刷新のサブPMを担当
書き換え後金融機関の基幹システム刷新で、要員25名・期間18か月の計画のうち進捗・課題・ベンダー調整をサブPMとして受け持ち、経営層向けの月次報告とクラウド移行方式の比較資料を作った

サブPMをPMには書き換えず、受け持った範囲を人数と期間で示しただけです。PMを名指ししない行なら、これで埋まるでしょう。PMの肩書きで率いた人も、同じ要素を足せば名指しの行に当てられます。

型1の40件は、職位の指定が13件、年数の指定が7件あり、単価の中央値は140万円と3つの型で最も高い帯です。うち29件は出身・在籍を明記していて、出身の行で見送る案件と考えてよさそうです。

残る11件はコンサルティング経験や職位相当のように幅のある言い回しで、厳しめに必須の側に数えましたが、コンサルティング経験がある人は行の文言で確かめる余地があります。job tagのITコンサルタントの項にも、就業ルートはますます多様になってきているとの記述です。型1向けの架空の例なら、「中期経営計画の策定を支援」に小売業・3か年・経営会議向け資料を月2回と足し、職位の指定があれば在籍時の職位を1語で添えます。

応募する上流案件は、どう選べばいい?

まず早見表で自分に近い行を決めます。次に案件ごとに、必須欄の全行へ経歴書の1行を当てられるかで選びます。

自分の経歴出身・PMの肩書きの指定で外れない案件単価の中央値主に開く一覧
コンサルファーム出身で、PMの肩書きもある139件(全部)130万円コンサルとPM・PMOの両方
コンサルファーム出身で、PMの肩書きはない109件130万円コンサル
PMの肩書きで率いた(ファーム経験なし)95件121万円コンサルとPM・PMOの両方
PMO中心(ファーム経験なし・PMの肩書きなし)68件121万円コンサル

外れないというのは出身とPMの肩書きの指定だけで見た数で、応募できるという意味ではありません。業界や要件定義などほかの行は案件ごとに確かめます。PMの下で担当領域を率いた人(サブPMやPL)は、PMとPLのどちらでも可とする2件を除き、PMO中心の行で見てください。冒頭の37歳も、PMの肩書きのないファーム外のコンサルも4行目です。単価の列を見ると、ファームの経歴が効くのは外れるかどうかより単価の帯のほうかもしれません。

行が決まったら一覧を開きます(件数は2026年10月11日時点)。

一覧には大手や上流以外も並ぶので、案件名に大手と構想やPMの語がある案件を開くのが早道でしょう。2本の一覧で、26件のうち24件が見えます。働き方で絞るなら、リモート併用とフルリモートは別の値なので、片方だけ選ぶともう片方が落ちます(26件はリモート併用13件・フルリモート9件)。

全件を追う時間がなければ、下の4手順で埋まる行と埋まらない行を書き出してまずは30秒で無料登録に進むと、ヒアリングで伝えることが決まった状態で話せるはずです。よくある質問には「登録後は専任担当者がヒアリングを行い、ご希望に合った案件をご提案します」とあり、最初の連絡は通常1〜3営業日とも書かれています。

  1. 早見表で自分の行と、開く一覧を決める
  2. 案件ページの「求めるスキル・経験」の必須の行を1行ずつに分け、出身・肩書き・年数・資格の行と仕事の中身の行に振り分ける
  3. 出身・肩書き・年数・資格の行が合わなければ見送る。同等可・望ましい・準ずるが付く行は見送る理由にしない
  4. 仕事の中身の行には経歴書の1行を数字入りで書き出し、全部書ければ案件ページのエントリーから登録に進む。書けない行が残るなら、登録後のヒアリングで希望の方向を伝えて提案を待ち、型2に多い要件定義などの仕事を今の案件で1つ増やす
必須欄の行チェック4手順(見送る行と、経歴書の1行を当てる行の分け方。同等可・準ずるは見送る理由にしない)

面談は、回数の記載がある108件のうち2回以上が90件、83.3%なので、2回を前提に準備するとよさそうです。聞かれることは案件面談でよく聞かれる質問(PMOの例)にまとめています。

1行目で閉じる案件と、行を分ければ1行ずつ答えられる案件は、一覧の上では見分けがつきません。出身の行が合わないのか、自分の1行を当てきれないのかで迷い、応募の手が止まるなら、閉じる前に行ごとに埋まるかを書き出すほうが早いと思います。

まとめ

  • 大手の上流案件139件のうち、コンサルの経歴(出身・経験)を代わりなしで必須にするのは44件、31.7%。残りの95件は出身の行では外れない
  • 出身とPMの肩書きの指定だけで見ると、PMの肩書きで率いた人(ファーム経験なし)は95件で約7割、PMOが中心の経歴でも68件と半数近くが外れない
  • 必須欄は中央値4行。出身・肩書き・年数・資格の行で見送るかを決め、仕事の中身の行には経歴書の1行を数字入りで当てる

上流案件の必須欄は、1行目で閉じるものではなく、行ごとに当てるものです。案件一覧で職種と単価を絞り、必須欄を1件ずつ行に分ければ、応募先は自分で決められます。

集計方法

集計日は2026年10月11日、母数はoffeeerに掲載実績のある1,816件で、募集終了を含む累計です。現在募集中の件数ではありません。大手の上流139件のうち同日時点の募集中は26件で、同じ案件の重複カードは1件に数えました。

大手は案件名に大手かメガバンクを含む605件、上流は案件名に構想・企画・戦略・要件定義・RFP・BPR・ロードマップ・統括・全体PMO・PM(PMO・PMI・PM補佐を除く)などの語を含む案件とした独自の線引きです。エンジニア枠や営業企画、補佐など21件は除き、PM・統括系43件には案件名に移行・移転・運用・テストの語がある案件のPMも7件含みます。

型1と型2は構想・企画系96件の必須欄を全件目で読んで分けました。コンサルの経歴が必須の44件は型1の40件とPM・統括系の4件で、出身・在籍・勤務を明記するのは32件、コンサルティング経験や職位相当など経験・相当の書き方のみは12件です。迷うものは厳しめに必須の側に入れたので、外れない件数は甘く出ていません。

PMの肩書きの指定は、PM・統括系の必須欄25件(必須欄のある42件のうち)と、構想・企画系の必須欄で名指しする5件を合わせた30件で見ました。PM経験やプロジェクトマネジメント経験の行は名指しに数え、プロジェクト管理・推進経験の行は数えていません。必須欄のない1件は外れない側に数えました。PMO中心の68件は、95件からPMの名指しがある26件と、コンサルかPMの経験を求める1件を除いた数です。

単価は案件ページに表示される直人材向けの月額で、幅のある案件は上限、稼働100%時の額です。中央値と150万円以上の割合は単価のある案件で計算しました。換算か実額かを読み分けられない案件があるため、受取額は稼働率で変わります。リモート可と常駐は不明を含む件数全体、面談回数と稼働率は記載のある案件を分母にしています。

応募者の属性の条件や企業名が入った必須欄3件は、件数に含め、本文や例には使っていません。用語は案件の用語集にあります。

出典・参考文献