検索条件を「フルリモート」に絞ると、さっきまで並んでいた案件リストが目に見えて短くなります。業務委託でプロとして案件に参画するなら、稼働場所は生活の設計に直結する条件です。それでも出社ゼロは思っているより狭き門で、条件の立て方を誤ると、選べる案件そのものを減らしかねません。offeeer掲載案件1,653件を集計すると、その門がどれほど狭いのか、狭さの代償として単価に何が起きているのかが数字で見えてきます。

業務委託のフルリモート案件はどれくらいあるのか

offeeer掲載実績のある案件1,653件(2026年8月時点)のうち、フルリモート案件は131件、全体の7.9%です。出社を一切求められない働き方は、案件市場では少数派に入ります。

内訳で最も多いのはリモート併用の772件(46.7%)で、基本リモートが427件(25.8%)、常駐が245件(14.8%)、フルリモートが131件(7.9%)と続きます。ほかに相談可が21件、確認中が6件、不明が51件です。

働き方件数割合
リモート併用772件46.7%
基本リモート427件25.8%
常駐245件14.8%
フルリモート131件7.9%
相談可21件1.3%
確認中6件0.4%
不明51件3.1%

※割合の母数は掲載全1,653件

一方で、フルリモートと基本リモート、リモート併用を合わせた「リモート可」の案件は1,330件、全体の80.5%あります。出社ゼロを条件にすると母数は1割弱。月に数回の出社を許容できるなら8割。同じ「リモートで働きたい」でも、線をどこに引くかで選べる件数はまるで別物になります。

このギャップを知らずに「リモート」というキーワードだけで検索条件を組むと、リモート併用の案件までまとめて弾いてしまい、本来出会えたはずの案件を取りこぼします。

フルリモート案件は増えているのか減っているのか

四半期別に働き方判明分を追うと、2024年第4四半期に10.2%あったフルリモート比率は、2025年第2四半期の10.6%をピークに1割強を保ったあと、2025年第3四半期を境に一段下がり、2026年第2四半期は6.5%、直近の2026年第3四半期(8月23日集計時点の途中経過)は5.6%まで縮小しました。

四半期件数フルリモートリモート可計常駐
2024年Q4254件10.2%91.3%8.7%
2025年Q1134件10.4%77.6%22.4%
2025年Q2151件10.6%83.4%16.6%
2025年Q3183件3.8%85.2%14.8%
2025年Q4206件7.3%87.4%12.6%
2026年Q1166件5.4%84.3%15.7%
2026年Q2214件6.5%85.0%15.0%
2026年Q3178件5.6%79.8%20.2%

※働き方判明分が母数。2026年Q3は8月23日集計時点の途中経過

フルリモートがほぼ半減した一方で、常駐が急に増えたわけでもありません。リモート可計はどの四半期も8割前後。主流は「完全在宅」でも「原則出社」でもなく、リモートを軸に必要な局面だけ出社する、いわば中間の稼働形態に落ち着いています。

国の統計も同じ方向を向いています。国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、雇用型就業者のうち直近1年間にテレワークを実施した人は16.8%。令和6年度調査から1.2ポイントの微増です。東京都の多様な働き方に関する実態調査(令和6年度)では、都内従業員30人以上企業のテレワーク導入率は58.0%と、前年度の60.1%から2.1ポイント下がりました。母集団と指標で方向感は割れているものの、テレワークが右肩上がりに拡大している局面でないことは共通しています。案件市場でフルリモートが縮んでいるのは、この潮目の中の動きです。

フルリモートにこだわると単価は下がるのか

実測で見るかぎり、下がります。フルリモートの月額中央値は110万円で、基本リモートの130万円より20万円低い水準です。

働き方件数中央値P25P75
フルリモート131件110.0万円85.0万円150.0万円
基本リモート427件130.0万円110.0万円160.0万円
リモート併用772件120.0万円100.0万円150.0万円
常駐245件120.0万円100.0万円150.0万円
リモート可計1,330件125.0万円100.0万円150.0万円

フルリモート131件のうち単価が判明している118件の分布では、80万円未満が16.9%、80万〜99万円が17.8%で、100万円未満が3割を超えます。ボリュームゾーンは100万〜149万円の37.3%ですが、200万円以上は6.8%にとどまります。高単価帯が薄いのが、フルリモートの単価分布です。

背景にあるのは職種構成の偏りです。フルリモート131件の内訳を職種タグで見ると、エンジニアが40件と最も多く、コンサル15件、PM14件、ITコンサル10件、PMO6件、AI5件と続きます。もともと単価帯が高いPMOやコンサルはフルリモートの母数自体が小さく、単価帯が相対的に低いエンジニア系の比率が高いため、全体の中央値が押し下げられる構図です。職種別の単価中央値はコンサル150万円、ITコンサル135万円、PM130万円、PMO125万円に対してエンジニア95万円で、フルリモート案件の職種構成がそのまま単価の低さに表れています。PMOの単価相場そのものは、PMOフリーランスの単価相場80〜200万円帯の実態で詳しく整理しています。

では稼働率を絞った案件ならフルリモートが増えるかというと、そうでもありません。稼働率79%以下の148件では、リモート可は96.6%まで上がるのに、フルリモートは10.8%。全体平均の7.9%よりやや高い程度です。稼働の低さと出社の有無は、別々の軸で決まっています。稼働日数を減らす交渉と出社をなくす交渉は、分けて進める必要があります。

職種によってフルリモートのしやすさはどう違うのか

同じ業務委託でも、職種によってフルリモートの通りやすさは大きく異なります。エンジニアはフルリモート比率が18.1%あるのに対し、PMOはわずか1.8%です。

タグ判明件数フルリモート基本リモートリモート併用常駐リモート可計
PMO331件1.8%21.8%55.3%21.1%78.9%
PM214件6.5%21.5%51.4%20.6%79.4%
コンサル376件4.0%35.9%46.8%13.3%86.7%
ITコンサル152件6.6%25.7%52.0%15.8%84.2%
エンジニア221件18.1%20.8%46.6%14.5%85.5%
PL80件3.8%16.2%60.0%20.0%80.0%
戦略57件5.3%35.1%42.1%17.5%82.5%
SAP51件2.0%21.6%66.7%9.8%90.2%

ただ、リモート可計まで視野を広げると景色が変わります。フルリモートでは10分の1の開きがあったPMOとエンジニアも、リモート可計ではPMO78.9%、エンジニア85.5%。差は6.6ポイントまで縮まります。どの職種も8割前後で揃っていて、「PMOだから出社漬け」は実態と合いません。分かれているのは出社ゼロにできるかどうかの一点で、リモートワークそのものの可否ではないのです。

職種による単価差はPMO・PM・ITコンサルの単価差を実測1,480件の中央値で比較した記事で扱っています。働き方の条件は、報酬水準とあわせて見て初めて判断できます。

なぜPMOのフルリモート案件はほとんどないのか

PMOのフルリモート比率が突出して低い理由は、役割の性質にあります。PMOはプロジェクトの会議体を回し、複数のステークホルダーの利害を調整し、現場の温度感を拾いながら進捗を管理する仕事です。議事録に残らない廊下での立ち話や、会議の直前直後の空気感は、画面越しでは拾いきれません。

週次の進捗会議で数字上は問題ないと報告されていても、担当者の表情や他部署とのやり取りのトーンから、このタスクは実は詰まっているのではと察知できるかどうかが、PMOの仕事の精度を左右します。この種の察知は、オンライン会議のカメラ越しでは著しく難しくなります。現場に体を置いて初めて拾える情報が多い職種ほど、クライアントはフルリモートでの参画を認めにくくなります。

ただし、PMOがリモートワークに向かないという話ではありません。リモート可計は78.9%。基本リモートや併用まで含めれば、8割近い案件がリモート主体の稼働を受け入れています。重要な局面だけ出社し、あとはリモートで進める。PMOの現実的な稼働の組み方はここにあります。

リモート可の案件は実際どんな働き方なのか

基本リモートやリモート併用の案件で求められているのは、リモートを主体にしながら、定例会議やプロジェクトの節目で出社する働き方です。フルリモートではないからといって、常駐に近い頻度で出社を求められるわけではありません。

出社になりやすいのは、プロジェクトのキックオフ、要件定義や重要な意思決定を伴う会議、システム障害のような緊急対応です。裏を返せば、それ以外は在宅で完結する案件が大半です。契約前に確かめておきたいのは、月あたりの出社頻度の想定、交通費が実費精算か報酬込みか、そして出社が発生する条件は何か。ここをすり合わせてあれば、稼働が始まってから想定外の出社に振り回されずに済みます。出社頻度が「月2回程度」のように幅を持たせて書かれている案件も多いため、想定の上限まで聞いておくと確実です。

会社に在籍しながら業務委託の案件に関わるなら、労働時間の扱いも絡んできます。会社員のまま業務委託を行う場合の労働時間の考え方で整理していますが、所属先の勤務時間と業務委託の稼働がどう線引きされるかを知っておくと、リモート案件の稼働設計も立てやすくなります。

フルリモート条件で絞り込む前に何を確認するべきか

「フルリモートのみ」で案件を絞ると母数は131件、「リモート可」まで広げると1,330件。選べる案件の数はおよそ10倍違います。最初からフルリモート一本に固定してしまうのは、この差を捨てる選び方でもあります。

問い直したいのは、避けたいのが出社そのものなのか、それとも通勤の時間と固定費なのか、です。後者なら、月に数回の出社を許容するだけで案件数は大きく広がり、単価も基本リモートの中央値130万円まで視野に入ります。稼働の条件は絞ること自体が目的ではなく、報酬と働き方のバランスを取るための手段です。フルリモートで固定してから探すより、リモート可まで広げてから、出社の頻度と理由を案件ごとに確かめて絞る。この順番のほうが、条件と単価の両方で納得のいく一件にたどり着きやすくなります。

まとめ

業務委託のフルリモート案件は全体の7.9%で、2024年秋に1割あった比率は直近で5.6%まで縮んでいます。単価は基本リモートより中央値で20万円低く、職種によってフルリモートの通りやすさは大きく異なりますが、リモート可計で見ればどの職種も8割前後です。フルリモートに条件を固定する前に、リモート可の範囲まで候補を広げ、出社の頻度や理由を案件ごとに確認したうえで、自分の稼働設計に合う一件を選んでください。

出典・参考文献