更新面談で、今の単価がそのまま据え置かれた。上げてほしいと伝えても、明確な理由が返ってこない。フリーランスのPMOとして案件を重ねている人なら、一度は覚えのある場面ではないでしょうか。隣の案件のPMが自分より高い単価で契約していると聞けば、なおさら釈然としないはずです。実は、その差は運や交渉力だけの話ではありません。offeeerに掲載された案件のうち単価記載のある1,480件を集計すると、PMOとPM、ITコンサルの間には数字ではっきり読み取れる差が存在します。

フリーランスPMOの単価は実際いくらか

月額の中央値は120.0万円、平均は127.4万円です。offeeer掲載実績のある案件1,605件、うち単価記載のある1,480件を2026年8月時点で集計した数字で、特定の企業や案件を指すものではありません。平均のほうが中央値より高く出るのは、単価の高い一部の案件が平均を押し上げているからで、肌感覚に近いのはむしろ中央値の120万円だと思います。

価格帯別の分布を見ると、単価の重心がどのあたりにあるのかがつかめます。

価格帯(万円)件数割合
〜4910.1%
50〜791006.8%
80〜9921114.3%
100〜14973049.3%
150〜19937925.6%
200〜594.0%

案件のほぼ半数が100万円台に集まり、150万円以上まで含めると全体の約3割にのぼります。200万円を超える案件は全体の4.0%どまりです。最小値40万円、最大値480万円という幅の広さだけ見ると単価はいくらでも伸びそうに思えますが、実際に多くの人が動いている範囲は100万円台から150万円台の間に収まっています。四分位で見ると、下から4分の1の線が100.0万円、上から4分の1の線が150.0万円でした。100万円を割っていれば下位25%の側にいて、150万円を超えていれば上位25%の側にいる。自分の単価がこの二本の線のどちら側にあるのか。そこを確認するところから話が始まります。

単価の分布は単なる価格表ではなく、案件がどんな役割で組まれているかを映す鏡でもあります。100万円台の案件と150万円台の案件とでは、求められている責任の重さがそもそも違います。PMO案件だけを取り出した単価の広がりと、高い帯の案件をどう取るかは、PMOフリーランスの単価相場と高単価案件の取り方で別に整理しています。

PMOとPM・ITコンサル・コンサルで単価はどれだけ違うのか

同じ案件データを職種タグ別に見ると、PMOはPMやITコンサルより単価中央値が低い位置にいます。複数のタグが付く案件は重複してカウントしているので、件数の合計は案件総数とは一致しません。

職種タグ件数単価中央値(万円)
コンサル365150.0
PMO320125.0
エンジニア21395.0
PM210130.0
ITコンサル147132.5
PL82110.0
AI57125.0
SAP55170.0
戦略53152.5
営業44115.0
業務43135.0
インフラ35115.0
データ30110.0
プリセールス29130.0
アドバイザリー25170.0
マーケ24130.0
セキュリティ23130.0
テックリード22110.0
PdM12135.0

PMOの中央値125.0万円に対し、PMは130.0万円、ITコンサルは132.5万円、コンサルは150.0万円です。同じプロジェクトの中で隣り合って働いていても、名乗る肩書きが違うだけで月5万円から25万円の開きが生まれています。さらに上を見ると、SAPのようなドメイン特化領域が170.0万円、アドバイザリーが170.0万円、戦略が152.5万円と、PMOより頭ひとつ高い水準に並びます。単価を動かしている主な軸は稼働時間の長さではなく、担っている役割そのものだとわかります。

エンジニア95.0万円やPL110.0万円がPMOより低いことも、この構造を裏づけているように見えます。実装や個別タスクの遂行に責任を持つ役割よりも、プロジェクト全体の進行に責任を持つ役割のほうが単価が上がり、意思決定そのものに関わる役割になるとさらに積み上がる。階段状のこの並びを頭に入れておくと、自分が今どの段にいて、次にどの段を目指せばいいのかが具体的に見えてきます。

月5万円と聞くと小さく感じるかもしれません。ただ12カ月で60万円、コンサルとの25万円差なら年間300万円です。案件を1本移すだけで、会社員の昇給の何年分かに相当する差がつきます。しかも職種タグの移動には、資格の取得や転職のような大きな踏み替えが必ずしも要りません。すでに担っている仕事のうち判断に関わる部分を、契約上どう位置づけ直すか。実態としてはそれに近い話であることも少なくありません。

なぜPMOの単価は125万円で止まりやすいのか

PMOの単価が125万円あたりで頭打ちになりやすいのは、PMOという職務の性質そのものに理由があると考えられます。進捗管理や課題管理、資料作成、関係者間の調整といった、プロジェクトの運営を標準化して円滑に回すための支援業務が仕事の中心です。支援が抜ければプロジェクトは止まりますが、予算や納期をどうするかの最終判断を下す立場ではありません。

これに対してPMは、独立行政法人情報処理推進機構がプロジェクトマネージャ試験の対象者像として示す通り、組織の戦略実現に寄与するシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトの目的実現に向けて責任をもってプロジェクトマネジメント業務を担う人材です。予算や納期、品質の最終的な帳尻を引き受ける立場である以上、報酬もその責任の重さに連動します。ITコンサルやコンサルはさらに、プロジェクトの実行段階に入る前の構想や意思決定そのものに関わるため、単価はもう一段上に位置づくのでしょう。

PMOの案件が支援業務の枠に留まっている限り、担当領域が広がっても単価の伸びは緩やかです。125万円という中央値は支援機能としての適正な水準であって、そこから上に抜けるには役割そのものを動かすしかない。数字はそう読めます。

単価150万円を超える案件はどこにあるのか

150万円を超える案件は、PMOの延長線上ではなく隣接する職種タグの中に多く存在します。先ほどの職種別中央値表を見返すと、150万円を超えているのはコンサル150.0万円、SAP170.0万円、アドバイザリー170.0万円、戦略152.5万円の4つです。いずれも意思決定に近い上流の仕事か、代替の利きにくい専門領域のどちらかに属しています。

情報処理推進機構がDX動向2024で指摘しているのも、同じ構図だと感じます。DXを推進する人材の不足は、システム開発を請け負うIT企業よりも、DXに取り組む事業会社側で深刻化しており、なかでもビジネスアーキテクトやデータサイエンティストの不足感が高いと報告されています。SAPや戦略、アドバイザリーの単価が高いのは偶然ではなく、事業側の意思決定に技術の言葉で関与できる人材の希少性が、そのまま単価に反映されている結果ではないでしょうか。

価格帯分布の表でも、150万円台の案件は全体の25.6%を占め、決して珍しい水準ではありません。200万円以上は4.0%にとどまります。ここから導ける現実的な目標は、PMOの125万円からいきなり200万円超を狙うことではなく、まず150万円台の帯に案件を移すことです。PMやITコンサルという肩書きへの移動、あるいはSAPのような特定領域への専門特化が、その最短距離になるはずです。逆に言えば200万円超の案件は絶対数が少なく競争も激しいため、そこを最初の目標に据えると遠回りになりかねません。上流や専門領域の需要がどのくらいの勢いで動いているかは、日本国内のフリーランスPM市場規模と需要動向でも扱っています。

稼働を減らしながら単価を上げられるのか

稼働を削りながら単価を保つ交渉は、市場構造的に通りにくいと言えそうです。稼働率の記載がある1,566件を集計すると、100%稼働の案件が1,386件で88.5%を占めています。80〜99%は34件で2.2%、50〜79%は104件で6.6%、49%以下はわずか42件の2.7%にとどまります。

稼働率(上限)件数割合
100%1,38688.5%
80〜99%342.2%
50〜79%1046.6%
〜49%422.7%

発注側の大半は、そもそもフルコミットを前提に案件を組んでいます。稼働を減らしながら単価を今のまま、あるいは引き上げてほしいという交渉は、案件全体のごく一部にしか通らない少数派の条件を狙っていることになります。会社員のまま所属先を持ちながら週2日や月10日といった限定稼働で参画したいのなら、稼働時間の交渉と単価の交渉は切り離して考えたほうが現実的だと思います。単価を上げる本筋は稼働時間の調整ではなく、ここまで見てきた役割や専門領域の移動にあります。

とはいえ、稼働率50〜79%の案件が104件、49%以下が42件と、限定稼働の受け皿がまったくないわけではありません。合わせて146件、全体の1割弱です。この帯を狙うなら、単価と稼働の両方で条件を出すと選択肢が一気に細ります。所属先を持ちながら参画するなら、まず稼働形態が合う案件を絞り込み、単価は次の更新で動かす。順番を分けたほうが、結果的に早く条件が整うのではないでしょうか。限定稼働の案件は数が少ないぶん、求められる責任の密度はむしろ高くなります。週2日でも成果に責任を持てる範囲を自分から切り出せる人が、この帯では選ばれます。

会社員のまま比べるなら、いくらの単価で釣り合うのか

独立や単価アップを検討する際に比較対象になりやすいのが、会社員としての年収水準です。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の産業計、企業規模10人以上で見たシステムコンサルタント・設計者のきまって支給する現金給与額は、男女計で月額48.07万円、年間賞与その他特別給与額は175.73万円でした。これを単純に年換算すると、年収はおよそ752.6万円になります。

比較軸年収換算出典
会社員(システムコンサルタント・設計者)約752.6万円厚生労働省 賃金構造基本統計調査(令和6年・一般労働者・男女計)
業務委託PMO(月額中央値120.0万円×12)1,440万円offeeer掲載案件1,480件の集計

数字だけを並べると差が大きく見えますが、業務委託の単価には社会保険料の事業主負担分や有給休暇、賞与、福利厚生といった会社員側の間接的な処遇が含まれていません。その点は差し引いて見る必要があります。それでもフルコミットでプロジェクトの成果に責任を持つ働き方を選ぶなら、会社員の年収水準を大きく上回る対価が市場に存在していることは、この二つの数字を比べればわかります。所属先を持ちながら案件に参画する場合も、比較の物差しとしてこの水準を頭に入れておくと、条件交渉の基準がぶれにくくなります。

会社員の年収は勤続年数とともに緩やかに積み上がっていく設計です。対して業務委託の単価は、案件が変わるたびに役割ごと再交渉される仕組みになっています。年功による積み上げを待つのか、役割の交渉で単価帯を動かしにいくのか。この違いを理解しているかどうかで、独立後の単価の伸び方はかなり変わってくるはずです。

単価帯を1つ上げるために、次の更新までに何をするか

次の更新までにやるべきことは、担当業務の中で意思決定に近い部分を可視化し、契約条件として明示することです。フリーランス・事業者間取引適正化等法は、業務委託をする発注事業者に対し、取引条件を書面か電磁的方法で明示するよう義務づけています。公正取引委員会のQ&Aによれば、明示すべき事項は当事者の名称、業務委託をした日、給付や役務の内容、その期日と場所、報酬の額と支払期日など8項目にわたります。業務委託をした時点では内容を決められない正当な理由がある場合だけが例外です。担当する業務の内容と報酬が対になって書面に残る仕組みである以上、担当範囲が変われば報酬も見直しの対象になる、という筋道で話ができます。

更新交渉に臨む前に、直近の稼働で自分が実際に担った意思決定の範囲を書き出しておくとよさそうです。進捗報告や資料作成にとどまらず、優先順位の判断やベンダー選定への関与、経営層への提言まで踏み込んでいたなら、それは職種タグでいうPMやITコンサルの仕事です。担当範囲がすでに変化しているなら、契約上の呼称や単価もそれに合わせて更新を求める根拠があります。担当範囲がまだ支援業務にとどまっているなら、次の案件でどの領域まで踏み込むかを先に決めてから、案件を選ぶ側に回りたいところです。更新面談での切り出し方と、据え置きが問題になる線引きについては、PMOの単価交渉で契約更新のときに単価を上げる進め方にまとめています。

需要の側も追い風です。情報処理推進機構のDX動向2025では、DXを推進する人材が不足していると答えた日本企業は85.1%にのぼり、米国やドイツと比べて著しく高い水準にあると報告されています。意思決定に踏み込める人材への需要は、供給が追いつかないまま高止まりが続きそうです。

まとめ

PMOの単価中央値は125万円、PMは130万円、ITコンサルは132.5万円、コンサルは150万円。この差は稼働量ではなく、担っている役割の違いから生まれています。稼働率100%が案件の88.5%を占める以上、単価を上げる現実的な道筋は稼働を削ることではなく、意思決定に近い役割へ担当範囲を動かすことです。次に狙う帯は200万円超ではなく、案件全体の25.6%を占める150万円台。ここなら手が届きます。次の更新面談までに、自分が実際にどこまでの判断を担っているか、言葉にできるでしょうか。

出典・参考文献